アトラス心クリニック
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うつ病

日本人の15.6人に一人の割合で罹患する可能性があるといわれているうつ病ですが、多くのメディアを通じて耳新しい病気ではなくなってきていると思います。また世界保健機構によれば、2020年には全ての疾患の中で2番目に経済的打撃を与えるであろうとも予測されています。ただ、まだその病気に対する正しい認識は十分ではないのではないでしょうか。こころとからだに不調が現れる、うつ病は決して気持ちの持ちようではありません。故河合隼雄先生は「こころとからだの中間の病気です」と言われていました。

抑うつ的な気分はほとんどだれもが、人生のある時期には例外なく経験する感情です。「正常な」抑うつ的な感情を、医学的な治療を要する病気として区別することは、精神保健のトレーニングを受けていない人にとっては、しばしば困難です。私たちの文化では抑うつの感情は恥ずべきものであり、またそのような誤った認識が受け継がれてきました。1990年代初期の米国の一般市民対象の調査では70%の人が精神疾患は情緒的な弱さ、65%が親の誤った教育、45%が当人の責任、自分の意思で克服できる、精神障害は生物学的な基礎があり脳が関係していると考えている人はわずか10%にしかみたなかったという興味深い結果があります(複数回答あり)
 
このような偏見と誤解はプライマリケの現場で、内科的に説明がつかない症状、精神的な苦痛をさまざまな身体症状で表現する「身体化」といった枠組みに組み込まれてしまい、精神疾患として治療されることさえなくなってしまうこともあります。

うつ病の身体症状
1・睡眠障害 2・疲労・倦怠感 3・食欲不振 4・頭重・頭痛 5・性欲減退
6・便秘・下痢 7・口渇 8・体重減少 9・めまい 10・月経異常
こころやからだに次のような症状はありませんか?
1か月以上毎日、憂うつな気分または沈んだ気持ちがする。
1か月以上毎日、何ごとにも興味がわかない。
いつも楽しめていたことが楽しめない。
そのほかにもこんな症状はありませんか?
a 食欲の増減または体重の増加があった。
b 睡眠に問題がある。(寝付きが悪い、真夜中や早朝に目が覚める、など)
c 話しかたや動作が鈍くなり、いらいらしたり落ち着きがない。
d 疲れをひどく感じたり、気力がないと感じる。
e 自分に価値がないと感じたり、罪の意識を感じる。
f 集中したりで決断することが難しい。
g 生きていたくないと思う。

うつ病の重症化を防ぐうえでも早期発見、対応が大切とされていますが、上記のように一般的に身体症状で発症し、身体疾患として診断されることが多く、治療が遅れてしまうケースや、十分な治療により患者様が寛解(病状が安定し日常生活が概ね送れるようになる)に至らず病状が長引いて自殺に至るケースも多くあります。

うつ病の治療の基本は「休養」と「環境調整」と「薬物療法」です。例えば水力発電ではダムに水が満々と貯留していることが必要ですね。うつ病ではそのダムに溜まっていなければならない水がひどく減ってしまった状態と考えてください。それではエネルギーを作ることができません。まずダムに水を貯めるためには、水の放出をやめて、すなわち休養をとること、例えば休職が無理ならば、勤務状況を見直す(環境調整)が治療の第1歩となります。(みなさんの心のダムは国土交通省の管轄ではありません!)

 
また、現在ではうつ病の生物学的病因についての主要な学説は、セロトニンやノルアドレナリンといったモノアミン神経伝達物質の不足によるものと考えられています。その説に準じて薬物療法を併用していくことも大事な治療方法です。最近の代表的な抗うつ薬は脳内のセロトニンやノルアドレナリンを補うことができる作用を持っています。これらのグループのお薬は神経末端で、神経伝達物質の再取り込みを阻害することによって、必要なセロトニンやノルアドレナリンの濃度を保つように働きますが、基本的に効果発現まで、10日-14日間ほどかかるため、不眠や不安があれば睡眠薬や抗不安薬の処方が必要となります。

うつ病の患者様のもう一つの心配は、薬を飲み始めたら一生飲まなければならないのでしょうか?という質問を受けます。抗うつ薬は毎日飲み続けることで少しずつ症状が改善していきます。もちろんいくつかの症状のなかでも早くよくなる症状もあれば時間がかかるものもあるのであせらずゆったりとした気持ちで根気よく服薬を継続することが大事です。専門医の指導のもとでお薬の量を調整しながら一定量を服薬し、症状の軽快がみられた時点でそこからさらに1年間の薬物療法の継続が必要であると考えられています。症状がよくなったからといって、勝手に服薬を中止したり、薬の量を減らしたりすると、50%の方が再発し、また重症化することも明らかになっています。症状が改善後も医師の指導のもとに慎重に減薬し、維持量を継続することで再発率は10%程度に抑えることができるといわれています。こうして服薬と受診を継続していくことが、主治医と一緒に、生活面や仕事面での問題解決の方法を模索する契機になることもあるかもしれません。

どのような薬にもプラス面(効果)とマイナス面(副作用)がありこれらを秤にかけてプラス面がマイナス面を上回ると判断した場合にお薬として使用していきます。最近の抗うつ薬は以前のものより副作用はかなり軽減してきましたが、口渇、便秘、胃腸症状、めまい、不安、眠気等の症状が出現することがあります。多くは飲み始めにあらわれますが、2週間程度で自然におさまってきます。また、前記のように患者様自身で服薬を急に中断すると、中断症候群(めまい、四肢の異常感覚、不眠等)が発現しますので、必ず主治医、薬剤師にご相談ください

うつ病の患者様にとって治療の励みとなることをいくつか取りあげてみました
*家族や周囲の人が普段と変わらず接してくれること
*自分の辛さを理解しようとしてくれること
*辛い気持を聞いてもらえること
*小さなことでも良くなった点を指摘してもらえた時

このように患者様がうつ病から抜け出すためには、治療の継続と周囲のサポートが必要です。せかさず、患者様が通院を続けられるように見守っていくことが大事な治療のポイントとなるのではないかと考えております。
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