治療の中心は薬物療法です。基本治療として用いられるのが「抗精神病薬」ですが、現在「定型抗精神病薬」と「非定型抗精神病薬」の2つのタイプに大きくわけられます。我が国では1955年にクロルプロマジンが発売されて以来多くの定型抗精神病薬が用いられてきました。薬理作用として脳の辺縁系の神経細胞のドパミン受容体をブロックすることで陽性症状を改善する一方、錐体外路症状の出現が最も大きな副作用であり、アカシジア・ジストニア・振戦など患者さん自身も辛く外見的にも社会復帰を妨げる要因にもなり、服薬をやめてしまう原因にもなっていました。また陰性症状に対しては効果がなく、強い鎮静効果のために患者さんの認知機能の低下にもつながると考えられています。
1988年にクロザピン(すでに海外諸国では治療の中心はこの薬に移っていましたが日本では2009年にようやく認可がおりました)とクロルプロマジンに比較研究から、クロザピン以降の「従来の抗精神病薬抵抗性の患者さんに効果がある薬剤」が「非定型抗精神病薬」として取り扱われるようになり、現在にいたっています。これらの薬剤はドパミン受容体に限らず、セロトニンなどの受容体をもブロックする働きがあります。セロトニン受容体をブロックすることは陰性症状の改善にも効果があり、また認知機能(脳の覚醒や記憶・集中力・ワーキングメモリー・遂行能力などの機能)がスムーズに働くようになると考えられており、社会復帰につながる可能性も大きくなるでしょう。
このように非定型抗精神病薬は、錐体外路症状、高プロラクチン血症(無月経・乳汁分泌・乳癌・心血管障害などの合併症を引き起こす)、遅発性ジスキネジアなどの副作用の発現率は大幅に軽減されていますが、一方体重増加は問題となる副作用であり、放置していると糖尿病を発症する可能性もあるため、陰性症状の改善により外出や運動を積極的に促していくことも大事な治療となります。
最近は初発時から非定型抗精神病薬を用いるケースも増えてきていますが、定型抗精神病薬を基本治療薬として使用して続けている患者さんも大勢おられます。定型抗精神病薬の副作用が出ている場合や、症状が改善しない、患者さん・家族が希望しているといった場合は非定型抗精神病薬への切り替えも可能となります。その際は主治医とよく相談し二人三脚で取り組んでいかれる事をお勧めします。切り替えるために必要な期間ですが、はっきりしたデーターはありませんが、数週から数カ月程度かけてゆっくり変更してくことが望ましいと思われます。 |