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摂食障害

摂食障害は主に神経性食思不振症と神経性過食症とにわけることができます。女性による極端な食欲不振とやせ状態については17世紀後半から報告がありますが、症例の急激な増加は第二次世界大戦後から特に1960年以降です。
日本の摂食障害有病率は1-3%とされており男女比は1:5と圧倒的に女性が多くなっています。またテレビの普及した1960年代は拒食症が、コンビニが普及した1975年以降は過食症が急増したともいわれています。
摂食障害はヨーロッパやアメリカの白人女性に多く日本をのぞくアフリカ、中東、アジアにおいては極めて少ないとされてきました。それはヨーロッパやアメリカ、日本の社会における、女性の自立や社会進出の増大にみられる女性の役割の変化、痩身が「女性の美と成功」の象徴として肥満が美容上健康上に軽視された、社会的風潮によるところが密接に関連しています。
しかし最近ではアフリカ、中東、アジア等の諸国やアメリカ、イギリスのマイノリティにおいても摂食障害は増加しています。

摂食障害の原因

摂食障害の発症に関与する要因は、文化、社会的要因、心理的要因、生物学的要因が複雑に関連しあって発症すると考えられています。

1.文化社会的要因

*美容や健康上の理由から、やせ願望・肥満軽視が社会に浸透している。
*女性の社会進出によりライフスタイルの選択肢の多様化(女らしさの多様化)がしたがためのストレスの増加
*飽食の時代ゆえに食事が生体を維持するという意識の希薄化

心理的要因

患者の両親をめぐる依存と独立の葛藤や、自己同一性の確立をめぐる葛藤自分らしさの追及)があげられ、古くから「成熟拒否」や「女性性拒否」がその中核と考えられてきた経緯があります。またさらに病前性格として、自己の存在やあり方に対して低く評価する傾向、すなわち自尊心の低さも指摘されています。ボディイメージの歪み(身体象の障害)は正常体重であるのに太って醜いと思い込み、摂食行動異常を強化してしまいます。体重と体型について過剰な関心と認知の歪みから、病的なやせ願望、肥満に対する恐怖を生じ、極端な食事制限・自己誘発性嘔吐・下剤や利尿剤の乱用に至るようになります。

生物学的要因

上記のような要因だけで摂食障害を発症するかというと必ずしもそうとは限りません。最初は拒食、ダイエットなどによって「食べない」がそのうち、空腹感を感じても「食べられない」となり、さらに過食を感じる人はいくら食べても満腹感を感じず「食べたら止まらない」という状態になります。これは摂食行動の中枢機構に機能異常を生じていることを示唆しています。扁桃体―視床下部―中脳における代謝、内分泌の信号系が何らかのかたちで障害されているのではないかと考えられています。

摂食障害の症状

具体的な臨床象ですが、精神的、身体的にわたり多彩です。精神的には、抑うつ症状・不安症状・強迫症状・失感情症(内面の葛藤を言語化できない)がみられます。身体的には自己誘発性嘔吐による、歯の異常、食道粘膜の裂傷、下剤や利尿薬の乱用による電解質の異常、さらには自傷行為や自殺企図・アルコール乱用・万引きなどの問題行動にいたることもあり、慎重な診察が必要となります。また低体重、低栄養が続くと、中枢神経系にも異常をきたし、脳波の徐波化、睡眠障害、認知力・集中力の低下がみられるようになり、CT象でも脳室の拡大、脳萎縮を呈するようになります。また低体重に必発の「無月経」がありますが、やせる以前から無月経である場合は骨密度の顕著な低下がみられことがあります。体重が正常範囲内であっても稀少月経や過多月経を呈する場合があり問診が大切です。
そのほかにも徐脈、低血圧、低体温、皮膚の乾燥、産毛、肝機能障害、脾腫など病状は多彩であり、電解質異常による突然の心停止・繰り返す嘔吐による窒息など、死に至る重篤な合併症を引き起こすことも少なくありません。

摂食障害の治療

摂食障害の治療に唯一特効的な治療方法はじつはありません。精神療法・行動療法・認知行動療法・身体療法などが組み合わされて治療が行われています。外来通院による治療は長く根気のいる加療となりますが、医師との治療関係を作り、患者様の治りたい、変わりたいという気持ちの動機づけに寄り添っていくことが大事かと思われます。しかし体重がマイナス30%となった場合、生命維持として危篤な状態(意識レベルの低下、脈拍、呼吸、血圧の異常)がみられた場合はご本人の意思にそわなくても緊急入院という判断をとらせていただくことがあります。摂食障害の予後調査では7割のかたが軽快、残りのケースではアルコール・薬物乱用が病歴を遷延させていることがわかっています。また、ヨーロッパのファッション業界でも「やせすぎモデルは不健康である」としてBMI(身長と体重の国際的尺度)が18以下のモデルは登録できないような自主規制の方向に動いています。女性としての美しさや輝きは体重の数字で決まるのではないと思いますがいかがでしょうか。

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